紋浪ちゃんの覚え書き

気になることとか拙い和訳とか

嘘つきは誰だ!

 

 

 にーはおにーはお。

これ読む前にまずこっち読んでね!

 

 

HSKが終わって、殷くんと張くんに合流した私。

2人に、「劉ちゃんは?」

と聞いたところ、なんだか2人のテンションが一気におかしいことになった。

 

「ねえ。先生、先生の荷物はまだホテルにあるんですか?」

と殷くんがおそるおそる聞いてきた。

「ないよー。だって私リュックひとつできたんだもん。」

と答えると、

「ほーら!まただよ!あの女また嘘だよ!お前いい加減信じるのやめろよ」

と張くんがまくし立てた。

 

「ちょっと、なにがあったの。」

 

と、聞いて見ると、

 

「劉は今、スーツケース取りにあいつのホテル戻ってるんですけど、あいつは先生の荷物もホテルにあるから自分が取りに行ってる間待ってろって言ったんです。

それで、自分が戻ってきてから先生を迎えに行って一緒にご飯食べてあいつの駅まで送れって僕たちに命令したんですよ。

でもこいつ(張くん)が、絶対先生の荷物があるなんて嘘だ!って言うから…」

 

劉ちゃん(同居人)と私は同じホテルに泊まってて、殷くんと張くんとは別々なんだけど、3人の日本語の試験会場から私たちのホテルは3キロも離れてる。

 

そしてこの日は土砂降りである。

 

傘をさしてもびしょ濡れになる中で自分の荷物取りに行く間待ってろ、と言うのはわがまますぎる。

その上まだ彼女はわがままな要求をしている。

もともとこの試験が終わったら彼女は彼氏のいる潍坊に行くことになっていて、

枣庄に帰る私たちとは駅が全く違うのにその駅まで私たち3人で彼女を送れ、と言ってるらしい。

 

そんな無茶苦茶なわがままに業を煮やした張くんがブチ切れて劉ちゃんを待たずにタクシーを飛ばして私の試験会場までやってきて私を拾って、勝手にご飯食べてさっさと帰ろう、というわけだ。

 

話を聞く限りあまりにわがままがすぎるし、

彼女のわがままに彼ら2人が辟易してたのはなんとなくわかってたから、別に諫めることもせず、3人で気ままにご飯を食べることになった。

 

我慢の限界を迎えた彼らは劉ちゃんからの着信を黙殺してショッピングを楽しんでいたが、

 

やはりこの3人の中で一番優しい殷くんが我慢できなくなって電話に出てしまった。

 

「だから、出んなっていってんだろー!」

 

と張くんが呆れ返っているが、ここでは私も張くんに賛成。

こうやって中途半端に優しくするから彼女のわがままが増長していくのである。

 

どうやら彼女は自力で私たちがいるショッピングモールまで来たという。

 

殷くんから電話を取り上げた張くんが、

 

「あのな、俺たち今三階の○○ってレストランにいるから。来たいなら自分で来い。」

 

と切り捨てた。

 

しかし、、また電話がかかって来て、

 

「迷子になったー、もうやだー」

 

と子供みたいに泣き叫んでる声が殷くんの携帯から聞こえてきて私ら3人はげんなりとした気分になった。

 

「やっぱり迎えにいってくるわ」

 

と、折れた殷くんを尻目に張くんは、しれっと

「先生、今から面白いの見れるから。覚悟しててね。」

と笑った。

 

そして、15分後、殷くんに全部の荷物を持たせた同居人が大声で泣きながら店に駆け込んできた。

 

そして、なにやら訳のわからないことを絶叫して、

私ら3人に向かってお店の水やら皿やら自分の携帯電話やらカバンやら手につくものを片っ端から投げつけて悪態を吐き散らかしたのである。

 

呆然とする私に「ね?傑作でしょ」と耳打ちする張くんに、

周りの目を気にして頭を抱える殷くん。

 

ひとしきり暴れまわって、

 

「あんたたちみんな大嫌い!死んでしまえばいい!しね!しね!」

 

というような旨のことを(あとで張くんと殷くんに教えてもらった)吐き捨てて退場した。

 

私たちはその後店員さんに謝って、

 

「今のなんだったの…」

 

と私が呆然とつぶやいたところで殷くんと張くんのスイッチが入った。

 

「いや、あれいつもなんだよ」

「そーそー、いつも滅茶苦茶なこと言ってきてそれが通らなかったらああなるんだ。」

「まじか…」

 

同居人は殷くんが迎えに言った先のApple storeでも品物を投げまくり暴れたらしく、殷くんはお店の人に謝ったりで大変だったらしい。

 

「いや。もう二度とあのこと高いもの売ってある場所では待ち合わせしないわ」

 

いやー、殷くん!反省するとこそこじゃないと私はおもうぞ!

 

彼らに言わせれば、彼女は自分の感情が制御できないらしく1つでも思う通りに行かなければ誰かを怒鳴りつけなければ気が済まないらしい。

それでいつも白羽の矢が立つのが私の目の前にいる2人の男子というわけだ。

 

「ね、先生って俺たちのこと嫌いだから一緒にご飯食べないんでしょ?」

 

「はあ!なに言ってんの。そんなわけないじゃん!」

 

驚いて突然声を荒げた私に殷くんはため息をついて張くんはしたり顔。

 

「劉は、先生は僕らのこと嫌いだから一緒にご飯食べたくないって言ってる、って」

 

「なにそれ!私は昨日あんたたちが私とご飯一緒に食べたくないって言ってる、って劉ちゃんに言われて出前で我慢したんだよ!」

 

「だから頭おかしいんだよあの女は」

 

そのあとはいろんな話をした。

 

こと張くんに関しては、劉ちゃんがもともと張くんのことが大嫌いだから、よく悪口を言っていた。

 

張くんは女を殴る

張くんは性格が悪くて勉強を一切しない

張くんはすぐ浮気をする

張くんは既婚者が好きだ

 

などなど、それを聞くたびに殷くんはこめかみを抑えて、

張くんは笑い飛ばした。

 

「先生それ信じてんの?」

「話半分に聞いてたかな。でも、張くんあまり話してくれないし、交流も少ないからどうしたものかわからなかった。

あー、でも張くんがSM好きのど変態ってのは信じたかなあ!」

「あー、それは事実だね。」

 

と悪ノリする殷くんをこずきながら猛然と料理をかきこむ張くんは今まで見たことがないほど楽しそうで、雄弁で。

 

いつもは劉ちゃんがいるから、むすっとしてるらしく今日は楽しくて仕方がないといいながら3人で枣庄行きの高鉄に乗り込んだ。

 

 結局枣庄についたのは5時だった。

 

高鉄のなかでは張くんと二人掛かりで殷くんに説教をした。

 

「あのね、劉ちゃんがいつも君に無理言ってんのは知ってるけど殷くんは無理しすぎだよ。頑張って要求に答えても、彼女がどんどんつけあがって、殷くんが自分のこと助けて当然の奴隷くらいに思ってるよ!

それに中国でこの調子だったら日本に行ったらもっとギャーギャー言うに決まってんじゃん。やめなってもう!不毛だよ」

 

「そーだよ。あいつにいい顔しても一文の得にもならねーんだから。俺みたいに嫌われた方が楽だぞ。だいたい、自分の要求聞かない奴のこと嫌いになる、って法則の中で生きてる人間に好かれることってそんなに大事か?」

 

そう、劉ちゃんの友達の基準は自分の言うことを聞くどうか。自分の思う通りになるかどうか。

残念ながら私は中国語がまだまだ全然話せないから基本劉ちゃんの話を肯定しかできないから彼女との対立がないのである。

 

ちなみに、張くんが劉ちゃんとの関係が悪くなった理由は、

「いやー、あいつたくさん服買うんですけど定期的にファッションショーするんだ。で、そこで可愛いか似合う以外のこと言うとあの癇癪がお見舞いされる」

 

なんでもいろんな服を着て2人に見せて可愛いかどうか聞くらしい。

 

自分の容姿に心底自信がない私からしてみればその自身をひとかけらでいいから分けて欲しいところである。

 

で、そこで張くんが、

「(用事があるって呼び出しといて)これはなんだ。付き合ってられないわ。だいたいお前は何様のつもりだ。俺はお前の召使いじゃないし、召使いほしいならその顔じゃたりねーぞ」

 

と、ぶっ放したらしい。

 

このほかにも劉ちゃんは、

先生(わたしのこと)が大変だからきて!

とか、

日本留学のことで相談したいの!

 

などと嘘のことで呼びつけて、男の子たちに荷物を運ばせたりお出かけに付き合わせたり、先のファッションショーにつきあわせたりやりたい放題だったらしい。

 

で、ブチ切れた張くんは先の言葉を吐いて早々に離脱したらしい。

まあ後半はただの暴言だけど、それを言いたくなる張くんの気持ちはものすごくわかる。

 

むしろ、黙って耐えてる殷くんは仏か何かの一種だと思うから来世はもっと幸せな人生を送ってほしい。

張くんは私と一緒で心が腐りきってるから一緒に地獄行きである。がんばろうな!

 

 

 まあ、私は同居人だし好きなところもたくさんあるし今までだって一緒にいて楽しかったことがたくさんあるから、これからも今まで通り行くつもりだけど、あんな狂ったような癇癪を見せつけられて私はなんだかひどく冷めてしまった。

 

 だいたい彼女は19だぞ。

しかもここは中国で言葉が通じないわけではない。

ショッピングモールで道に迷ったからって泣き叫んで暴れまわるなんて8歳の子供でもやらんぞ。

 

私は同居人が体が悪いのを理由に大学を休学している、という話をすると。

 

「またそんなこと信じて。それは裏金使った不正入学が失敗したから入学できなかっただけの話ですよ」

「信じてたんだ、まあそりゃそうか」

 

とばっさりいかれたことである。

 

いや、もはや誰が本当のこと言ってんのかわかんないぞ!

 

 

「ねえ、この国ではね。その2つの目で見えること2つの耳で聞いたこと全部信じてたらだめですよ。何を信じるか何が真実か決めるのは自分だけ。」

 

と、張くんがハードボイルドなことを言い出したのでいよいよ頭痛が止まらなくなってくる。

 

同居人は絶え間なくこの目の前にある男子2人が私とはプライベートな関係を望んでいない、と訴えていたので、ここまで突っ込んでゆっくり話したことがなかったから、私たち3人のおしゃべりが止まることはなかった。

 

結局私たち3人が枣庄についたのは午後の5時だった。

 

張くんと殷くんの家は高铁の駅から5分程度のところにあるけど、私はここから高速バスに1時間ほど揺られて、タクシーに乗り換えてやっと宿舎に到着という運びになるはずだった。

 

「先生先生、大変ですよ」

「なんで?」

「今日はもう高速バス最終出ちゃったみたいで帰れませんね」

 

嘘つけーーー!こないだ私は8時ごろのにのったぞーー!

 

なんなら、最終の時間も知ってる。

前日どうやって帰るかちゃんと調べてあったからである。

 

「え?じゃあどうすんの。私」

「今日は僕たちの家に泊まっていってくださいよ。僕らの親も親戚も兄弟も、先生に会いたがってるから。歓迎しますよ」

「遠慮しないで!」

 

 

と、いうわけで。

中国人の一般家庭ってどんななんだろーって常日頃興味があったし、

なんだか面白そうなので

 

「バスないならしょうがないか!」

 

って騙されたふりをして着いて行くことにした私の話はまた次回です。

 

ではではさようなら。