にーはおにーはお。
さて、前回素晴らしいおじさんに出会って楽しい旅をしたが、
次の日はなかなかの地獄だった。
まず、朝起きておもったのが
「今日観光行きたくねえな!疲れたぞ!」
ってことだ。
まあそうも言ってられないのでぼんやり昨日と同じ公園の入り口へ向かう。
その日目指したのはこちら。
その名も、黄石寨。
ちなみにチケットには、
黄石寨に行かないなら張家界に来たとはいわねーぜ!
ってかいてある。
うるせーこのやろう!って感じだ。
まあとにかく。
ここの景色が素晴らしいらしいからみに行くべく、ぼんやりとロープウェイに乗り込んだのはいいものの、ロープウェイの上で気がついた。
乗るロープウェイを間違えたぞ!
というわけで間抜けな私はロープウェイで登ってそのまま降りた。
じゃあ、黄石寨にはどうやっていくんだ?
と思って近くの案内員さんに聞いてみたところ、何でも一回ゲートから出ないといけないらしい。
案内員さんの話では、この観光保護区にはいくつかのゲート(入り口)があるらしく、その日の私の目的地に行くには、私が入って来たゲートをAとするなら、Bというゲートからしか行けないらしい。
じゃあ、Bというゲートにどうやって行くかというと、一度Aのゲートから出て、Cのゲートまでバスで行き、Cのゲートから再度入りそこから園内バスに乗り換えるとのこと。
もう行くのやめよーかなあ!!!!
とめんどくさくて地団駄を踏みそうになりながらとりあえずAのゲートからでて、Cのゲートに行くバスを探してると、
「お嬢さんお嬢さんどこに行くの?」
と怪しいおじさんが声をかけて来た。
間違えねえ!バイクタクシーの客引きだ!
と思ったけど、何もかもがめんどくさくなっていた私は、
「森林公園ゲート(最終目的地のゲートBの名前)」
と答えた。
その前にタクシーにそこに連れて行ってくれ、と頼んだのに断られたし、連れて行けるわけがないのである。
そう思って言ったのに…
「連れてくよちょっと高いけどね」
「いくら?」
「50元!」
確かにバイクタクシーにしては高いが、
この辺りで疲れ果ててた私は乗ることにした。
ホントにバカだと思う。
バイクは風を切って走り、私はぼんやりとしている。
こんな異国で、ヘルメットも被らないで知らないおじさんの背中にしがみついて、一体自分はどうなってるんだろうとただただ考えた。
バイクはどんどんわけのわからないところに入って行く。
ついに道の舗装がなくなる。
トンネルをいくつも潜る。
この辺になってくると乗らなきゃよかった。
と、若干後悔するけど後戻りなんてできるわけもなく、私はもはや無事つくことを祈ることしかできない。
しかし、いくら慈悲深い神様とはいえ、ここ最近無茶しかしてなかった私にお灸を据えようと思ったのだろうか。
けたたましい音を立ててバイクのエンジンが異常を起こして、いきなり動かなくなって、私の体は嘘みたいに宙を舞い、地面に叩きつけられた。
痛いよ!
まあ道の舗装が甘いことがあって叩きつけられたのが砂の上だったからかすり傷で済んだ。
パスポートや財布を落としていないか確認して運転手に、
「大丈夫?」
と声をかける。
そう、最後まで運転してもらわなきゃ。
こんなわけのわからないところで置いてかれたら相当厄介だ。
幸い運転手のおっさんも何ともなくて、バイクが直るまで私は道端でぼーっと座り込んでいた。
何とかバイクが直ったらしく、そのあとはおっさんと奇妙な連帯感が生まれて呑気におしゃべりをしながら目的地に着いた。
おっさんは私のことを仕切りに心配していた。
そうこうしてるうちに目的地についておっさんにお金を渡してお別れした途端。
いきなり両足の力が抜けてその場にへたり込んでしまった。
こ、怖かったあー。
とため息をついた途端それまで痛くなかったところがズキズキ痛み始める。
自分が冷静だと思ってたけど、どうやら相当緊張していたようだ。
この日私は誓った。
二度とバイクタクシーにはのらない。
因みに、旅が終わってボスと北京であってこの旅行の話をした時この話をしたところ、
「あなた危ないですねー。そんなことではお仕置きですねー。」
と言われた。
誤解を招くような表現は、よせ!
何するつもりだこのやろう!
って感じだ。
前から思ってたけどボスは片言の日本語を操るのだが、私が中国語がある程度出来るようになった今なお日本語を使いたがるから私とボスの会話は基本日本語である。
ただ、この日本語がわざとなのかわざとじゃないのか誤解を招く表現が多いのである。
棗庄に来たばかりの頃、
「夜寂しい時は私に電話しますよ。相手しますよ」
とのたもうた時は、お前さん自分が何言ってんのわかってんのかい?と問い詰めようかと思った。
多分、寂しかったり困ったことがあったら遠慮なく言ってね、と言いたかったのだと思われる。
ちなみにボスは張家界に古い友人がいたらしく、
「あなた私に行く前にいうことでしたね。そしたら私も一緒に行くことができますね。それに私の友達と一緒に行けたね。」
と残念がっていた。
ああ!言わなくてよかった!
誤解を招かないようにいうけど、私とボスの関係は極めて良好である。
ただこのおっさんは何かと適当でいつも振り回されるので私はいつも何かしらこのボスに憤っているのである。
ボスとことを進めるよりも自分一人で動き回ったほうがスムーズにそして何より気楽に事が運ぶのだ。
話を戻す。
とにかく文字通り満身創痍でゲートBにたどり着いた私は入場して、お目当ての場所に到着した。
で、ロープウェイ搭乗!
しようとして、ロープウェイのチケットを買おうと財布を出すと、
現金がない!!!!
そう、ポンコツな私は朝からやる気もなくノロノロ出て来て、財布に現金を入れるのを忘れていた。
中国はそこらかしこで電子マネーを使うくせに、なぜか観光地の入場券とホテルのデポジットだけは死んでも現金でなければ使わせてくれない。
それをわかっていたのに現金を忘れる。
最悪である。
でも、かろうじて50元程入っている。
ロープウェイは往復72元。
しかし、学生の私は日本の学生証を提示すれば36元で乗れる。
助かったー!と思って学生証を出そうとした時、
あれ?
あれれ?
あれれれれれれ?
学生証がない…!
どこを探してもない。
ポケットの中に入れていたはずなのに。
そう、さっきバイクから叩き落とされた時にポケットの中からこぼれ落ちてしまっていたのである。
しかし、ロープウェイにならなければ目的地に行くことはできない。
なんで私はいつもこうなんだ。
こんな苦労して(バイクから叩き落とされて)まできたのに、行けないなんて。
こんなのってない。
財布の残金50元。
学生証を失った私は72元なければロープウェイに乗れない。
ロープウェイに乗らなければ目的地には行けない。
終わりだ。
まさに気分は絶望であった。
ああ、昨日はあんなに楽しかったのに。
昨日あんなに楽しかったから今日こんなに不幸なのかなあ。
今思えば全て自業自得なのであるが、かわいそうな自分に酔いしれてるその時の私は完全に悲劇のヒロインである。
ああ、昨日の幸運の半分でも今日あれば…、
ん?
昨日?
ハッとした。大急ぎでカバンの中からパスポートケースを取り出した。
昨日、汚いカバンの中で財布が見つからなかった私はおじさんたちがくれたタクシー代をパスポートケースにしまい込んだのである。
貰ったのは100元。
ロープウェイに乗ることができる。
おじさんたち…!
私は昨日に引き続き再度あの二人のおじさんに心の底から感謝した。
そして自分が社会人になったら学生に必ずタクシー代をあげる、という目標を立てた。
てなわけで、ロープウェイに乗り込むよ。
そして、たどり着いた目的地からの景色は本当に素晴らしかった。
昨日と変わんないじゃん!
と思う人もいるかもしれないけど、
とにかくこの場所は人がほとんどいなくて静かで、景色から展望台がとても近くて、
ゆったりと風景を楽しむことができる。
本当になんでこんなに人がいないのか少し怖くなるほどに人がいなかった。
てなわけで、たっぷり景色を楽しんで、ロープウェイで降りた私はまたも恐ろしいことに気がついた。
どうやって帰るんだ…?
バカである。
しかし、さすがのバカな私ももう一度バイクタクシーにのる気にはならなかった。
それほど叩き落とされたのが怖かったのであろう。
で、またも近くの案内員さんにホテルの近くのAゲートに戻る行き方を尋ねると、一度出てバスに乗らなければ行けないとのこと。
今度はバス停を探し求めて歩き回ると、
親切な中国人のおばさん集団が声をかけてくれて目的地が一緒だったということで、一緒に行くことになった。
しかし、一緒にバスに乗り込むと何やら様子がおかしい。
お金を払わないといけないはずなのに、お金を払わずに降りれてしまった。
なぜだろうか。
実は私が乗ったバスは、本来のバスではなくどこかのホテルが自分のホテルに泊まってる客のために運営してるバスだったらしい。
おばさんたちは道に迷ってる外国人の私を心配してくれて、自分たちが泊まってるホテルのバスの運転手に無理を言って私を乗せてくれていたようだ。
中国人、というと煩いとかそういうことを思い浮かべる人が多いとは思うけど、
こんなふうに見ず知らずの人に優しさを投げ出せるところこそが中国人の最大の特徴だと私は思っている。
これからもたくさん出てくるけど、私はこの旅行でこんな中国人の人たちの素敵な親切に何度も何度も助けられた。
今回もおばさんたちが声をかけてくれてバスに乗せてくれなかったら私はまたバイクタクシーにのるか、かなり長い時間彷徨い続けなければならなかっただろう。
無事にバスを乗り継ぎ、ホテルの近くのゲートにたどり着いた私はおばさんたちに丁寧にお礼を言った。
着いた時は土砂降りだったけど、
私はとにかく謎の達成感に包まれて、そのまま雨の中を走り出そうとしたら、
「濡れるぞ!」
と雨宿りしてる中国人のみんなに止められて雨が止むまで他愛のないおしゃべりをした。
そんなわけで、武陵源の観光は波乱の末に幕を閉じたのだけれど、この時の私は自分がまたしても重大なポカをやらかしてることに気がついていない。
てなわけであしたも書くのでよろしくね。
おやすみなさい。