紋浪ちゃんの覚え書き

気になることとか拙い和訳とか

電話越しの中国語

 

 中国に行く前と後で変わったことはいっぱいあるけど、一番大きな変化は電話をかけるようになったことだと思う。

 

中国人は電話が好きだ。

というか極度のめんどくさがり屋さんである。

 

その電話好きといったら人様のツイートを引用してしまうのだけど、まさにこんな感じだ。

 

 

このツイートを見たときは100回くらい頷いて首がもげだ。

 

で、もげた首を拾いながら言語パートナーの中国人とwechatしてたら始まったのだ。

 

「可以打给你吗」(電話していい?)

 

中国人は電話が大好きだ。

棗庄にいた頃、私はよく中国人にwechatを教えるとき、

「私は電話無理だよ?聞き取れないんだからね!」

と釘を刺した。

 

が、みんなそれを無視してガンガン電話をかけてくる。

 

それまでなければ何度でもかけてくる。

 

仕方なく、電話を取る。

 

「喂,你好......」(はいもしもし)

 

私は仕方なく電話を取る。

 

「喂你好◯××△…………………」

 

お手上げである。

特に棗庄は方言がきつくて何言ってるのか全くわからない。

 

が、重要な知らせに限って電話で知らせる。

 

勘弁してくれ…………………。

 

私は途方に暮れながら同居人に電話を渡したものだった。

 

しかしまあ、電話をかけるという習慣にはすっかり馴染んだ私は、日本に帰っても打つのがめんどくさくなるとすぐ電話をかけるので日本の友達からは、「今電話は無理だからね!」と釘を刺されるようになってしまった。

 

 とにかくこの電話は中国人とやりとりするなら不可欠で、絶対必要なツール。

 

私はこれを克服できず帰国してしまったので、

これを克服するべくインターネットでランゲージパートナーを募集した。

 

 

どっかの出会い系アプリと酷似したアイコンではあるが、これは外国語を勉強してる人がネイティブと繋がるためのちゃんとした勉強アプリである。

 

帰国して話す機会が極度に減ったのだから、努力しなければあんなしんどい思いをして身につけた中国語はすべて水の泡だ。

 

ここで中国人の言語パートナーを作って何とか毎日中国語を話すようにしようという目論見である。

 

たくさんの人から「你好」とメッセージが来た。

 

 中国人と話すのは中国語以外ではかなり楽である。

 

日本人ならどうしても会話をリードする側に行きがちな私だけど、中国人相手なら最初から最後まで相手のペースに乗っかればいいから楽だ。

 

話題が途切れて黙ることなんてないし、

よく笑いよく怒る彼らと話してると疲れて消耗して死んだ自分の感情が水を得たように働き出す。

 

何回もいろんな人とメッセージのやり取りをして私は結果的に4人のランゲージパートナーに出会うことができた。

 

で、毎日電話をかける。

 

散々中国語はまだ下手だから許してくれーと釘を打って始めたのだけれど、彼らは優しくて根気強く付き合ってくれる。

 

前から思っていたことだけど、中国人の人たちは、中国語を学ぶ外国人にとことん甘い。

 

間違えたり言葉に詰まっても、

 

「你别着急。慢慢说吧,我听得懂。你的汉语很好呀」(あせらなくていいよ。ゆっくり話してよ。聞き取れてるから。君の中国語はすごく上手だよ)

 

の始末である。

 

こ、こんなに優しくされていいのかーーーー!

 

と私は天を仰いだ。

 

発音やら、言い回しを習う。

真似する、覚える。

 

毎日30分から1時間しか話せないから、頑張って準備をする。

 

どうやって話すか参考書を開いて、辞書を引いて、今日会ったことを伝えるために中国語にしていく。

 

 そして毎日の終わりに電話してその日の話をして笑うのだ。

 

毎日こんなに平和で幸せでいいのかなあって感じだ。

 

同級生は卒論やら、引越しの準備やらで忙しいから寂しい毎日だけど、毎日こうやって友達と話せるのはそれがたとえ中国語でも日本語でも嬉しい。

 

そんな中でも私を最もぶち抜いたのは深センの男の子だった。

 

ここで押さえておきたいのは中国人の出生地、どこに戸籍があるかのこだわりである。

日本にも少しあるけど中国の出生地マウントはかなりすごい。

 

何てったってどこ生まれかどこに自分の戸籍があるのかで、子供の入試の難易度、義務教育が受けれるか受けれないかが決まる世界に彼らは生きてる。

 

本地北京人、本地上海人、本地深セン人は結婚相手としても大人気だ。

 

ちなみに本地とは本物、正真正銘の、という意味である。

それらの都市の戸籍を持ちだいたい三代にわたってその地に住んでいるということがポイントである。

 

故にこれらの大都市の男の子は女の子を口説く時にしきりに、

「我是一个本地上海人」

「我是老北京」

などとガンガン自慢する。

 

ちなみにボスは金で北京戸籍を買った。

札束で殴っていくスタイル。三億の家。

 

話を戻す。

 

さてこの深センボーイと出会って深センボーイはすぐに電話をかけたがった。

 

私は「ごめんまじで中国語の発音悪いから、がっかりしないでね!」と念を押して聞き取れるか不安満載でかけたんだけど、とにかく綺麗な普通語を話してくれて本当に聞き取りやすかった。

 

私は男の人の話す中国語が好きだ。

低い声で歌うように重たいアクセントが散りばめられた中国語を自由自在に操って愉快に楽しそうにおしゃべりしてる中国男子を見てるだけでクラクラする。

一種のフェチズムなのかもしれない。

 

ちなみに本日2回目の登場にはなるけれどボスの話す中国語は優雅で軽快で美しい。私の憧れだ。いつかあんな普通語を話せるようになるなら死んでもいい。

 

ちなみに次に好きなのは張くんの話す中国語。

大胆な声調の上がり下がりがすごく男らしい。

張くんは、中国人たちに言わせるととにかく口が上手いらしい。

電話だけで女の子をものにしてしまうレベルで上手いらしい。

それも納得するほどに張くんの語り口調は愉快で元気が出る。

 

殷くんの話す中国語はthe山東男子という感じで、ドスが効いてて早くて滑舌がいい。

性格の良さがにじみ出ている、効いてたら安心する幸せな気持ちになる。

 

 

話を戻す。

 

 

その深センボーイの普通語は綺麗だった。

 

聞き取りやすくて、綺麗。

夏休み福建省の友人の家に遊びに行った時その家族の話す中国語はほとんど聞き取れなかった故に南の中国語に恐怖を持ってる私の不安を打ち砕く、彼の中国語は聞き取れる。

 

そんなある日、いつものように電話で話していた際にいきなり彼がきいたこともない言葉を話し始めた。

 

どうやらレストランからかけてきていたようだ。

 

「ねえねえ!今の何?方言?」

とすかさず聞いてみると、

「ああ、さっきのね中国語じゃなくて僕の母語だよ。」

「ええ?どういうこと?!」

「君は、広東語を知ってる?」

 

広東語!!!!

 

そう、広東語とは中国のごくごく一部の地域と香港でのみ話される言葉。

中国人にとっても全くの外国語らしく聞き取ることができない、文法から中国語とは違う言葉。

 

「僕は深セン人だから、家族や馴染みのレストランとか普段の生活では広東語を使うことが多いよ」

 

ああああああ!

 

広東語を操る深セン人!

中国好きにはたまらない、面白いことの詰まったような人。

 

そして最初から「俺は本地深セン人だぜ!」と言わずにこうやってさらっと出してくるところがスマート!素晴らしい!

 

「あのね!私は広東語を話す人と知り合ったのは初めてだから、よかったらもう少しいろいろ教えてくれる?」

 

というと、彼は快くいろいろ教えてくれた。

 

深センは今あまりにも豊かになって深センに居住する人の90パーセントが外の地方から来た出稼ぎ労働者だという。

 故に広東語を話す深センの人は10パーセントほどしか存在しないらしい。

 

 今まで大都市にはあまり行かずに地方ばかりを旅してきた私。

正直大都会に興味がなかったんだけど…

深センは、夜景が綺麗で中国の経済成長の最先端で独特の空気があるし、広東料理は美味しいし香港も近いから絶対楽しいよ!君は絶対来るべきだよ!深セン人の僕の名誉にかけて後悔はさせないよ!」

と熱烈宣伝されてしまい、

「い….いきてえ!」

と単純な私はついついその気になってしまった。

 

まあてなわけで愉快な深センボーイや台湾男子に中国語を習いながら殷くんや張くんの家に入り浸り、中国語を忘れないように磨きをかけて、就活が終わったらいつでも中国に行ける準備は万端!

 

取り敢えず今年の目標は、深センと香港と台湾とハルビン雪祭りに行くことだよ!

 

 

おやすみなさい。