紋浪ちゃんの覚え書き

気になることとか拙い和訳とか

久しぶりの中国旅行

 

 就活を終えて2ヶ月になる。

いい加減退屈に耐えられなくなり旅行に行くことにした。

 

行き先は、もちろん中国である。

 

今回の主な目的は杭州の西湖である。

 

そして、南京。

 

6月1日から4までは一人で旅行して5からは家族が来て上海を案内する約束だった。

 

  31の夜に上海に入り、1日に南京に移動することにしていた。

 

この旅行の前に私は放置に放置を重ねてなんの形にもなってないゼミの発表を乗り切らなければならなかった。

 

 徹夜に徹夜を重ねて、栄養ドリンクをゴクゴクと飲み続けて、廃人のようになって廃棄物のようなクオリティのレジュメを作り上げ、朦朧とした意識の中発表を終えてドタドタと電車に駆け込んだ。

 

今回の旅のテーマは優雅な旅

 

これはネタで言ってるんじゃなくて、ガチ。

椎名林檎など聞きながら、少しかかとの高い靴を履いて、お洒落なワンピースなど着て、ドミトリーではなくホテルに泊まる、ちょっとオシャンな旅を目指していたのである。

 

 1日の早朝の高鉄のチケットを買っていたので、優雅な旅にふさわしく慌ただしい朝にならないように、駅から近い宿を検索してとってあった。

だが、これがとにかくたどり着くのが大変だった。

 

まず、今回の旅行では空港から虹橋駅まで直結してると言う空港バスにチャレンジすると決めていた。

 

ので、バス乗り場に行くと、

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まあなんと言うことでしょう。

 

空港バスは今虹橋駅にいると書いてあるではありませんか!!

 

虹橋駅と浦東空港は上海の端っこと端っこなので、

「これは1時間くらい待たないとバスがこねえなあ」

と踏んだ私は、さっさと諦めて地下鉄に乗り込んだ。

 

地下鉄はとにかく混んでいて、周りではハイテンションな中国人が友達とマシンガントークを繰り広げ、恋人達は「ここはてめーらの部屋のベッドじゃねーぞ」と野次を飛ばしたくなるレベルのアツアツっぷりを発揮してる。

 

 私はげっそりとスーツケース片手に地下鉄がホテルの最寄の駅に着くのを待った。

 

 1時間と少し地下鉄に揺られて駅に着くと、もうすっかり夜も更けてる10時ごろ。

 

ここからさらにバスに乗り込む。

 

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スーツケースを盾に、「カリオストロの城」の銭形警部派の部下ばりの勢いでバスに突撃しながら、「ああ、私は今中国にいるんだ」と謎の実感を覚えた。

 

【参考画像】

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そこからバスに15分ほど乗って、迷いながらホテルに着いたのが11時。

 

お腹がペコペコだったので荷物を置いて適当に食べ物を探しに行くことにした。

 

ここで中国のSIMカードが入った携帯を開くと大量の微信が来ていた。

 

この通知の犯人は友人の香港人である。

 

この香港人については前の登場人物紹介で軽く触れたから、これも読んでおいてくれ。

 

 

3月に京都で拾った香港人

 

生粋の香港人で、英語広東語中国語日本語を自由自在に使いこなす、香港超名門国立大学の先生。ハイパーエリートお兄さん。

 

日本語の練習相手が欲しいと言ってたので、

 

「私でよければどうぞ。

その代わり英語と中国語おしえてぽよよ」

 

と言ったら、契約成立。交渉成立。

 

1週間に2回ほど電話でおしゃべりする関係である。

 

 そんな香港兄さんが、蘇州の大学で出張講義をやっているからさあ大変。

sumika,君は蘇州に来るべきなんだ。一緒に周庄に行って、上海を案内してあげる。一人で旅行なんて君の中国語じゃ、、、心配で。」

 

あ?てめえ今なんつった?

 

君の中国語じゃ…。

 

そうか。そうだよな。劉ちゃんもボスもみんな私を心配する。

 

薄々わかってたよ。

私の中国語はきっとまだまだ拙いのだ。

 

でも、私だってこのレベルになるまで3年血反吐吐きながらやってきたのに、悲しくて腹を立てて。

 

「ええ、ええ。左様でございますか。でしたらあたくしは絶対に貴方様には迷惑はかけませんからご安心なすってもうほっといてくださるかしらん。」

 

とキレて行方をくらませた。

 

なにが上海だ。

なにが周庄だ。

 

 

全部行ったことあるもん。バカにしないでよ。

 

てな訳で交渉は決裂。

 

「南京は日本人一人じゃ危ないよ。1日僕は仕事だから先に杭州に行ってから2日に南京においでよ。僕が案内してあげる。」

 

と、なおも言う彼の微信を受け流して、私は予定通り1日に南京に行くことにした。

 

 腹が立っていたし、腹も空いていたのだ。

 

てな訳で深夜食堂よろしく見つけたのは蘭州ラーメンのお店。

 

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さすが上海。

きれいな店内で私もご機嫌になる。

 

この麺を頼んで、

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来たのがこの麺。

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写真はイメージです、と書いてあったけど、写真より実物の方がよい、という稀有な例に出くわして私はとにかく驚いた。

 

これをずるずると幸せに食べてホテルに戻るとホテルの立派さにまた幸せが溢れ出す。

 

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私が五人くらい寝れそうな大きなベッドにダイブしてゆっくりと目をつぶった。

 

畜生、ここにゴージャスなカレピッピがいれば私は今世界一幸せな人間なのに!!!!

 

うおおおお、悔しいぜ!

 

現実の私は自腹で250元の宿代を払って、一人で二人用のでかいベッドに横たわっていた。

 

圧倒的敗北者である。

 

すごすごとシャワーを浴びて、布団に潜り込んでこんこんと眠った。

 

明日は6時の高鉄に乗るんだから。

明日は5時に駅に着かなくちゃ。

明日は4時半には起きなくちゃ。

 

 

そして、夜が明けて。

 

時計を見たら、5時45分。

 

 

もう死んだ方がいいぞ、私は。

 

泣きながら起き出して、ホテルのお兄さんにタクシーを呼んでもらって、髪の毛振り乱して駆け出した。

 

 優雅な旅を場外ホームランしてるスタートに私も自分にドン引きしてる。

 

   結局間に合わず切符を買い換えて、6時半の電車に変更。

 南京に着くのは9時になったけど、まあオッケー。

 

 誤差だよこの程度。

 

 そして高鉄の中でもこんこんと眠った。

 

あっという間に南京について、優雅でリッチな私はさっさとタクシーを飛ばしてホテルに荷物を投げ捨てて、観光の前にお昼ごはん。

 

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南京の名物鸭血粉丝汤という料理

 

茶色の四角いのは鸭血、書いて字のごとく鴨血を固めた食材。

 

多分これを読んでる人のほとんどが顔をしかめただろう。

 

しかし、この鸭血こそが南京の名物なのだ!

 

なのだ!

 

と断言してるが、これも香港人から習った。

 

私の為に、南京で絶対行くべき場所や食べるべきものを大量に送ってきてくれたからだ。

 

 私は彼が送ってきたメッセージに従い、旅をすることにした。

なんてったって彼は南京で1年間交換留学してたのだから。

南京についてはプロフェッショナルなのだ。

 

変な意地はらずについてきて貰えばよかったなあ。

 

と若干後悔した。

 

食べ終わったら夫子廟に行った。

ホテルから近かったからである。

 

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こんな門から入って、


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古い町並みを再現してある街道を抜けていく。


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ここは科挙の会場だったらしい。

 

ふむふむと解説を読みながら先に進む。

 

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そして、境内へ!

 

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赤いのは日本の絵馬みたいなものなんだけど、

私は中国のお寺のこの赤いやつが大好き。
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ここはもともと遊郭だったらしい。

 

おお。なんか優雅な感じになってきたじゃん。

私の旅行。

こうでなくちゃね。

 

そう、ここでやめときゃ良かったんだ。

 

が、何をトチ狂ったのか、私の頭の中のもう一人の私が

「you!行っちゃいなよ中山陵!」

と喚き始めた。

 

ちなみに中山陵は孫文さんのお墓である。

 

そして。脳内アドレナリン出まくってる私は、

 

行くしかねえな。

 

と思ってしまったのである。

 

馬鹿、馬鹿。

本当に馬鹿な女。

 

で、地下鉄乗って、中山陵へ。

 

標識をたどって歩いていく歩く。

 

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こんな道を、

「本当にあってんのかよ…」

と思いながら歩き続ける。

 

標識に目をやると。

 

「中山陵まであと1.6キロ!」

 

とか平気で書いてある。

 

死にたい。

 

化粧は汗で剥がれ落ち、ワンピースは太ももにまとわりつき、厚底の靴は歩くたびに足が痛い。

 

それでもなんの執念に突き動かされたか、私は歩き続けた。

 

ああ、もしも私が中国共産党の幹部だったらきっと車を回してもらえたんだろうなあ。

 

と。使い物にならない頭で考えた。

 

ベンチが目に入ったけど座らなかった。

 

ここで座ってしまったらもう立ち上がれなくなる気がしたからである。

 

そんな風に歩き続けること1時間と少し。

 

ついにたどり着く。

 

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が、この時私は到着した喜びよりも、

 

げえ!まだこんなに階段あるの!なんの冗談だよ!

 

と泣きたくなった。

 

が、泣いてもここに私の涙を拭ってくれるステキなボーイはいない。

 

ダラダラ汗を流しながら階段を一段ずつ登る。

 

さながら荒地の魔女である。

 

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ハアハア言いながら階段を上り、たどり着いた私はこの表情。

 

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か、かわいい!

やり遂げた顔してるううう!

なんでこんなにかわいいの!私!

 

疲れ果ててもう変なテンションになってバシャバシャ自撮りして、登ってきた方向を見下ろして、

 

こんなに登ったんだなあ。

 

と満足した。

 

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天井にある国民党の旗の絵をぼんやりと見つめた。

 

「いいかい、Sumika。中山陵に行ったら必ず天井を見るんだ。そこに国民党の旗が描かれてる。中国国内にこの旗が掲げられてるのはそこだけなんだ。だから、その旗を見るだけで中山陵に行く価値があるんだ。忘れないでね。」

 

と、香港人が言ってたのを思い出しながらぼんやりと天井を見つめた。

 

真っ青な旗。

かつては中国全土にはためき、

今はこの場所だけにしか存在を許されない。

 

たしかに圧巻だった。

 

じっくり見つめて、またひいひい言いながら降りて、明孝陵にも行った。

 

散々歩いて、歩いて、歩いて、

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たどり着いたら、

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閉まってた。

 

私は声を上げて泣きたくなったけど、

 

そのタイミングで棗庄からアイドルの音声メッセージが届いたので持ちこたえた。

 

私が南京にいた時棗庄では日本人会が開かれてたらしい。

 

もしもこの会のことを知ってたら私は一切合切を投げ出してアイドルのもとに走ったであろう。

 

が、なぜか日本人らしくなく連絡が異常に遅い棗庄日本人会の人々は、その宴会のことを私に知らせたのは1日前。

 

その時には私は全てのホテルと高鉄を抑えていたし。

 

香港人に、

「私は一人で立派にやれるんだ!」

と、たんかをきったあとだった。

 

これで棗庄に行ったら私のメンツが立たねえ。

男が廃る。

 

と歯を食いしばったのに、

明孝陵は閉まっていた。

 

ちきしょう!!!!

 

まあそのほかにも色々面白いものが観れたからいいけどさ。

 

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アイドルの声で気を取り直した私はすたすたと帰り道を歩いた。

暗い中でも歩いた。

 

くじけそうになるとアイドルの声を聞いた。

 

ああ、今すぐ棗庄にワープしたい。

 

が、そんな妄想しててもしょうがないのでガンガン歩く。

 

そして、ホテルに着いたのは5時半。

 

私は倒れ込んで深い深い眠りについた。

 

が、猛烈な足の痛みに目を覚ました。

 

時刻はまだ夜8時。

 

猛烈に腹が減ったが、動きたくないのでベッドでゴロゴロしてると、

 

Sumika,夕飯は食べた?」

 

と呑気な微信が来た。

 

「明日食べるよ。今日疲れたからおやすみなさい」

 

「なんの冗談かな?ふざけたこと言ってないでさっさと食べてこい」

 

と、いくつかのレストランの名前を送りつけてきた。

 

百度で検索をかけて一番近いレストランはなんとホテルから歩いて500メートルと近かったので、せっかくだし、腹も減ってたので行くことにした。

 

が。おそるべし香港人。このレストランが凄まじかった。

 

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川床である。

 

たくさん美味しそうな料理があったが、ひとり旅だし貧乏学生なのでドキドキしながらメニューを見ると信じられないほどリーズナブル!

 

中国の食べ物はとにかく一品がでかいので、

悩みまくりながら豆腐のにんにく炒めと肉焼売とご飯を頼んだ。

 

そしてたくさん歩いた自分へのご褒美に、

酸梅湯という梅ジュースと、

青島ビールをオーダーした。

 

せめてビールで山東気分を味わうことにしたのである。

 

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豆腐をご飯にぶっかけながらパクパク食べて、川からの風を感じて、私の幸福度数は限界点を突破した。

 

ほろ酔い気分で店を出て夜の風を楽しみながら、お散歩した。

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水に映る光はとても綺麗で、このままドボンと川に落ちてみたかった。

 

疲れていたからかビール一本ですっかり酔っ払ってしまっていた。

 

見るもの全てがキラキラに見えて、なんでもできるような甘い気持ちになった。

 

こんな夜の空気が吸い込みたくて、私は飽きもせずに中国を歩き回るのだと思う。

 

限りなく自由な気分だった。

 

頼りない足取りでホテルに戻り、ベッドに倒れこんで、その日の歩数を見ると

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まあなんということでしょうか。

 

過去最高記録を更新していた。

 

優雅な旅が、サバイバルに姿を変えていくのをひしひしと感じながら筋肉痛を無視して目を閉じてその日を終わらせる。

 

香港人は、

「僕は君に豆腐を食べて欲しくてあのレストランを紹介したんじゃない!そもそもあのレストランは…うんぬんかんぬん」

 

とかなんとか言ってたけど、それでも私は幸せだった。

 

美味しかったよ豆腐。

美味しかったよ焼売。

ビールは誰がなんと言おうと山東が一番なんだよ。

 

その日は夢を見た。

 

水に映る棗庄の街並み。

 

汚くて未開発で、うるさい町。

 

私の原点。

 

そんな風にして南京の夜は更け行き、次の日私は盛大な寝坊をかますのだけど、それはまた別のお話。