にーはお。
私です。
紋浪です!
さて、南京二日目の朝目が覚めたら、
朝の10時を回ってました。
この日は朝から、ゆっくりと朝ごはんを食べて散歩するつもりだったのだが全てキャンセル。
目的地へ向かいます。
この日の目的は南京大虐殺記念館の参観だったんだけど、これについてはまた別記事でしっかり書くので今回は飛ばす。
その後、どんよりとした気持ちで高鉄に乗り込もうとしたら、なんとまたしてもない座席を割り当てられた。
存在しない座席を割り当てられたので当然のごとく抗議に行くと、
「こちらのミスだわー」
とのことで無料で一等席に変わった。
ふっかふっかの一等席の座席に私はご機嫌。
ふっかふっか最高。
あと2時間くらい乗っときたいなあ。
と思ってたら1時間半で杭州についたぞ。
地下鉄に乗り換えてドミトリーの近くの駅で降りて。
古い町並みを再現した街の中にあるホステルに荷物を置いたらもう四時を回って。
私は西湖目指して走り出す。
香港兄さんから西湖は夕暮れが一番綺麗だよ、と聞いていたからである。
地下鉄乗って、夜市を駆け抜けて、いきなり目の前に現れた西湖に私は息を飲んだ。
あまりに綺麗で、ゆるゆる歩く。
「sumika,しんどいかもしれないけど絶対今日の夕方に西湖にいくんだよ!明日の夕方予報は雨なんだ。夕方の西湖は今日が君のラストチャンスなんだから」
「うるせー。うるせー。自由勝手にさせろ」
香港兄さんのいうことを素直に聞きたくなくてそうはいったものの。
やはりおすすめされたからには気になっていそいそ出かけてきたけど。
あんたは正しかったよ!
と叫びたかった。
本当に美しかった。
あまりにも嬉しかったのと、南京を出たことで気が緩んでそこらへんにいた中国人にスマホを渡してバシャバシャ写真を撮ってもらう。
前からはもちろん、後ろ姿までお願いする。
私は強欲で図々しい女なのだ。
達成感にこの笑顔である。
えええ、やっぱり私超可愛いじゃんね。
最高だなあ!
まあそんな戯言は置いといて。
てくてくと歩き始めるよ。
美しい。
夕暮れの風は気持ちが良くて、気持ちよくて風に髪の毛がさらわれてボサボサになってもゆるゆる歩く。
が、ここでも私は中国の雄大さを舐めていた!!
世界遺産にも登録されてる西湖。
一周、10キロです♡
(後で調べた)
とことこ歩いても、歩いても歩いても歩いても際限なく現れる道。
ええ、なんでこんなに歩いてるのに終わりがないんだ?
と若干怖くなってくる。
疲れ果てて途中で麺を食べて、また歩いて歩いて。いつの間にか夜になって。
サイケデリックなイルミネーションを死んだ目で見ながら歩き続けたら疲れ果てて眠たくなってきた。
が、ここで寝たら確実に遭難なので、泣きそうになりながら歩く。
これは有名な遊女の墓らしい。
私も埋めてくれと思った。
虚ろな目で「ゆ、優雅な旅!優雅な旅いいい」と呟きながら歩く私をギョッとした目で見てる中国人を無視して歩き続けて、歩いて歩いて。
たまに現れる謎のモニュメントで気を紛らわせながら歩いて歩いて。
思い出したようなイルミネーションに心癒されて。
この時すでに時刻は10時回ったくらい。
「hello,Sumika.杭州の旅はどう?楽しんでる?今日は何食べていた?何してる?」
ときた香港人のwechatを
「いやまだ西湖を散歩してるよ。西湖マジで大きいわ。」
といったら。
お前は死ぬ気か?
と絶句していた。
うるせー、お前が夕方行けと言ったから夜になったんだ。
ええん、もう紋浪つかれたよおおお。
一周終わった頃には足がもう動かなくなったのでタクシーを止めて。
中国人の女の子たちと相乗りでホステルまで戻った。
道中死んだ目をしてる私を心配した中国女子が私に飴ちゃんをくれた。
梅のキャンディ。
酸っぱさと甘さが容赦なく私の体の水分を奪い、私はタクシーを降りたら真っ先に水を買いに走る羽目になった。
疲れ果てて万歩計を見たらその日も狂った数字を叩き出していた。
が。前日さらに狂った数字を出していたので、
あんまたいした距離歩いてねえなあ。
と訳の分からん感覚のバグった感想を持って終わった。
そして次の日も例にも漏れずに寝坊した私は、この度のテーマを「寝坊と体力耐久レース」に変えようか考えながらまた朝から適当な店で麺を食べて1日スタート。
この日の目的地は霊隠寺という有名なお寺。
おめあては石像群です。
バスに乗り込んで一本ですぐつくお手軽さにご機嫌になりながらてくてく歩く。
この日はすでに筋肉痛が限界を超えて一歩歩く事に激痛。
涙流しながらニコニコ歩くやばい人の完成だ。
ちょっと雲南省の石林を彷彿させる光景に私は大興奮。
石窟も洛陽のよりも綺麗に残ってて見応えがある。
一つ一つ目に収めるように眺めながら、
こんな素敵な風景横目に。
こんな岩の間を通り抜けて。
石窟を背にしたお坊さんたちの姿はなんだか絵になるよね。
中国のお坊さんたちの動きやすさを極めた法衣が結構好き。
お寺で見かけるたびにこっそり写真を撮って密かに集めてる。
さて、のろのろ歩いててっぺんまで登って。
しっかりお祈り。
そしていよいよど真ん中の霊隠寺へ。
何やら物々しい共産党のスローガンが景観をぶち壊してるけど、そんなの関係ねえ!
中に入ってまたお祈り。
なんの神様かは分からないけど切実に祈りたいことがあったから、ひたすら祈っておく。
本殿の仏像は壮大だった。
上海の玉仏禅寺と似てるけど、スケールが違う。
ポカン口を開けていつまでも見てしまう。
そのままぼんやりとお寺を出たらもう夕暮れだった。
気がついたらお昼ご飯を食べていなかったことに気がついて猛烈にお腹が減ってくる。
とりあえずホステルの近くに戻ってご飯食べて、そのあとまた西湖でも見に行こうかしらん。
そんなことを呑気に考えていた私はこの30分後に核弾頭が落ちることを知らない。
この旅行の間、私を心配していた香港のお兄さんはひたすらに私にwechatを送りつけていた。
その心配は多岐にわたり。
- ちゃんと食べているのか。
- 食べたなら何を食べたのか
- もうホテルに帰ったのか
- 遅い時間に出歩くな危ないぞ
- この名所を見逃したらもったいないぞ
- この名物を食べ逃すな
などなどである。
旅の寂しさと頼りなさもあって。
そして返信しないとさらにばんばん送ってくるから、律儀に返信していたのだけど。
南京二日目の朝ごはんにラーメン食べて。
夜には焼きそば食べて。
香港人がキレた。
霊隠寺のバスで寝過ごして、二駅分歩いてヘトヘトになってホステルに帰り着いた私に、香港人の着信。
いつもはメッセージなのに珍しく電話だから、何かあったのかと思って電話に出ると、
「今日は昼ごはん食べた?え?食べてない?そのまま飢えた状態でいて。くれぐれも麺なんて口に入れないでね。6時に地下鉄の武林広場駅のBの出口で待ってる。」
と言いたいことだけ言って電話を切られてしまった。
え?
なになに?
香港兄さん今、杭州にいるの?来るの?
蘇州で仕事してたんじゃなかったっけ?
トラブルと刺激に飢えていて、腹が減ってる私はとりあえず行ってみることにした。
5時50までは懇々と眠り、またしても寝坊をぶちかまして、約束の駅に着いたのは6時ジャスト。
そこから必死の形相でBの出口まで走って階段を駆け上り、キョロキョロと三ヶ月前に京都で拾った姿を頭の中に再現しながら彼を探してると後ろから頭を小突かれた。
振り向いたら、香港兄さんがいた。
「久しぶりだねえ」
と呑気に笑う香港兄さんに、唖然とする私。
スマートに私の手から重たいカバンを取り上げて道路側を歩き始める香港兄さんに私は、
(これが英国仕込みのレディーファーストか…)
と刮目した。
もともと香港はイギリスに占領されてた歴史があって英国文化が色濃く残ってる上に、彼は英国の名門大学の院を卒業したという徹底っぷり。
熊本田舎女の私は、なんだか気後れしてトボトボと訳もわからないまま着いて行くことにした。
高級ブランドが軒を連ねる普段なら私が絶対寄り付かないデパートに慣れた足取りで入り込み、エレベーターに乗って最上階のレストランフロアへ。
沢山の高そうなレストランの中から一軒の綺麗なお店に足を踏みいれようとする香港兄さんのTシャツの裾を左手でひしと掴み、右手で汚いがま口財布を握りしめて私は恥を忍んで言ったさ。
「ケビンくん、私、お金がないです…。
今夜は夜市で食べ歩くか、蘭州ラーメン食べに行こうよ。私奢るよ!」
と死にたくなりながら提案する私を華麗に無視して、
「二人なんですけど大丈夫ですか?」
と優雅にウェイトレスに聞く香港兄さん。
そのまま引きずられるようにしてお店に入る。
出てきたお水がこれ。
これに喜んで写真を撮る私を香港兄さんはかわいそうな生き物を見る目で見つめていた。
「何食べたい?」
と聞いてくれたので、
「角煮食べたい!杭州の名物でしょ!」
とやけくそになって言うと、
「それを教えたのは僕だよね?」
とピシャリと一刀両断されて終わった。
運ばれてきたお皿は綺麗で、メニューを見てる香港兄さんは真剣な顔で、私はなんとなく手持ち無沙汰な気分だった。
注文が終わったあと、香港兄さんは私の相手をしてくれた。
「Sumika,生活が苦しいなら今すぐ香港においでよ。こんなに痩せてかわいそうに」
どうやら大いなる勘違いをしている。
そう。前回私が彼にあった時は三月で。
私が就活で最も激しくやけ食いをしていた時代で、今より5キロ太っていたのだ。
そして、現在その頃より7キロ痩せているので、彼の目から見れば私がいきなり痩せたように見えるのだろう。
彼の話を要約するには、
毎日麺ばかり食べて、せっかく来たのに名物も食べれずにかわいそうだと思った。
美味しいものを食べさせてあげたかった。
麺ばかり食うな。
夜遅くに人気のない道を歩いて快感を覚えるな。
とのこと。
私は色々言いたいことはあったけど、せっかく心配して来てくれたんだから。
ご飯をくれる人に悪い人はいないんだから。
と思って、神妙そうに頷いておくことにした。
因みに彼は私に飯を食べさせるために新幹線に乗って杭州まで来たらしい。
仏かよ。
来た料理は全部豪華で絶品で私は本当につつーっと涙が出て来てしまった。
肉の小籠包
魚と豚肉の角煮
が、その料理より私を驚かせたのは香港兄さんのレディーファーストっぷりだった。
コップの水が半分を切れば注いでくれる。
角煮は饅頭に挟んで食べるんだけど、香港兄さんは私のために饅頭にお肉の美味しいところを挟んで食べやすくしてくれた。
私は一体なんの接待を受けてるんだ…。
とまたしても香港レディーファーストに圧倒される。
でも一番嬉しかったのは、小籠包の食べ方を教えてくれたこと。
飲茶の本場香港人に小籠包の食べ方を習えるなんて、私はラッキーだなあと思った。
「こんな美味しいものを食べさせてくれるなんてあなたは本当にいい人だね」
と言ったら、一言手短に。
「心配。」
と返されてしまった。
お会計の時にがま口を取り出そうとする私を、視線一つで威嚇して、お兄さんはさっさと会計を済ませて。
「なんで君はそんなにお金を払おうとするの?」
と不思議そうに聞くので。
「日本では男性が全部払う文化はそこまで徹底してないし、君にここまでしてもらうなんてなんだか悪いよ。」
と言って、レシートを見せてくれるように頼むと、彼はレシートをぐちゃぐちゃに丸めてゴミ箱の中に捨ててしまった。
素直にお礼を言えばよかったかなあ。
と後悔して、反省して。
「ありがとう。本当に美味しかった。感動して涙が出るくらい美味しかった」
と言うと、今度はにっこり笑って。
「じゃあ僕も幸せだ」
と言ってのける彼を見て、これが正解なんだな。と思った。
帰りに香港兄さんは夜の街に連れて行ってくれた。
一つ一つモニュメントとか道端のちょっとした史跡をわかりやすく解説してくれた。
私が杭州名物の龍井茶を買いたい、というとお茶屋さんに連れて行ってくれた。
そして、お茶を買ってホクホクとしてる私に紙袋を渡して来た。
ポケットに財布とスマホを入れていた彼の唯一の荷物は私へのプレゼントだったのだ!
袋を開けると、香港のスターバックス限定のマグカップと、綺麗な缶に入った香港ブランドのクッキーだった。
「さっき買ったお茶。ぜひこれで飲んでね。」
とマグカップを指差して笑う香港兄さんにくらっと来そうになる私は落研らしく振る舞うことにする。
「ケビンくんあのさ。私に会うつもりで出張に来たの?さっきさ、私が貧乏ご飯ばかりで心配で思わず杭州に来たって言ったよね?なのにお土産用意してるの矛盾してない?」
「ノーコメント」
「じゃあ、私がケビンくんに頼んでたスマホのカバーも持って来てくれてもよかったのでは??」
「強欲な女だな!」
香港ではタオバオ(中国の通販サイト)が使えるので、私は彼にスマホカバーを代わりに買ってもらって次に会う時に渡してもらうように頼んでいたのだが。
どうやらそれはさっぱり頭から抜け落ちていたようだ。
なんだか照れ臭かったけど、しっかりお礼を言ったほうがいいことはさっきのご飯割り勘レシートゴミ箱事件で理解していたので。
「ありがとう。私プレゼント貰ったことあんまりないから、結構嬉しくて言葉が出ないや。本当ありがとう」
と頭を下げると、困ったような顔をしていた。
しょうがねえだろ。
日本人はレディーファーストに慣れてねえんだよ。
スマートにプレゼントを受け取ることなんて出来ない。
因みに、ケビンは彼の英語名である。
「僕は君に失礼なこと言ったでしょ?君が怒ってないか気にしてた。」
なんのことか考えたら南京に行く前に言われた「君の中国語じゃ心配」発言である。
「ああ、もういいよ。ケビンくん悪気があったわけじゃないことわかってたよ。」
ホステルまで地下鉄で帰ると主張する私に、地下鉄の駅からが危険だろと切り捨てて、タクシーを呼んでくれた。
乗り込む時に私が天井に頭をぶつけないように、タクシーのドアのへりに手を当てていてくれた。
なんとなく名残惜しい気分だった。
意地はらずに南京を案内して貰えばよかったなあ、ともう一回後悔した。
ホステルについてタクシーの会計をしようとすると、会計は終わっていた。
最後まで完璧なレディーファーストの前に私は完膚なきまでに叩きのめされて呆然と貰った紙袋を両手に抱きしめた。
負けねえ。
七月にあいつが日本に来た時、絶対に日本女子の接待能力を見せつけてやる。
何がレディーファーストだ!
avとアニメの国の女を舐めるなよ!
と、謎の対抗意識を燃やしてしまうから、私はどうにも恋愛に縁がないのかもしれない。
クッキーの缶を開けると、クッキーだけじゃなくて、パラリと綺麗な絵葉書としおりが入っていた。
香港人は電撃のように現れて、嵐のように去って行ったものの。
この香港人の存在が後に私の価値観をひっくり返してかき混ぜて、
この香港人のプレゼントが次の日の私を混乱の渦に叩き落とすのはまた別の話。
そろそろ七千文字を突破するので、今日はこの辺でサヨナラなのだ!