紋浪ちゃんの覚え書き

気になることとか拙い和訳とか

「太陽の下で」という映画を見た話。

 

 

「私たちが見ていた北朝鮮、それは『演出』された姿だった。」

 

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大家好!

試験が終わってすぐに映画を借りて来て見たから今日はその感想を書きたいと思う。

私の趣味として、韓国と中国、台湾の映画を見るというのがあって今日はそんな話をしたい。

 

 

これはロシア人監督が北朝鮮で撮ったドキュメンタリー映画

 

 

 

 これが日本のテレビ番組でも取り上げられて話題になってたのを見てずっと見たいと思ってたのだが上映してる映画館がなさすぎてDVDをまっていたら出たのでいそいそと借りて来て視聴。

 

 

 もともとこの映画を撮った監督のヴィタリーマンスキーさんは北朝鮮と二年間の撮影交渉を行って撮りたいビジョンがはっきりあって、北朝鮮に入国したのに、一年の間ひたすら北朝鮮当局の監視下に置かれて早々に当初撮りたかったものはとれないと諦めたという。

 

で、代わりに映画の撮影に徹底的に介入する当局の様子を隠し撮りして国外に持ち込んだフィルムを元に作られた映画がこの映画ということらしい。

 

 

 

 

映画自体は、平壌にすむ普通の少女、シンミちゃんにスポットライトが当てられて彼女の日常生活が淡々と映されるにすぎない。

 

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この子がシンミちゃん。

すごく可愛い。

f(x)のソルリに似ていると思うのは私だけであろうか。

 

この子が学校行ったり、ご飯食べたり、そういう何気ない日常を撮ってるだけなんだがこれが、如何にもこうにも目が離せない。

 

その持ってる空気全てが人を引きつけて離さないものがある。

 

ご飯を食べてるシーンも学生生活も、全てに出演者の緊張感が伝わってくる。

それは多分当局がカメラの横にずっといて目を光らせてるのが恐ろしくて恐ろしくて仕方がないのではないだろうか。

 

 もともとさわりだけ見てやめようと思ったのだが、本当にいつの間にか最後まで見てしまった。

 少女のありのまま日常を撮ろうとするのに当局が干渉する様子を隠し撮りしてつなぎ合わせただけの映画がどうして2時間も私は最後まで見ることができたのか考えてみた。

 

そして、この映画の中に1つの確固たるストーリーがあることに気がついたのである。

 

映画に最初出てくるシンミちゃんは、平壌内の小学校に通う普通の小学生である。

 

  しかし、この物語が進むにつれて彼女は少年団や、舞踊隊の一員など様々な肩書きが付与されて行く。

 

 少年団としてのバッジをつけて、舞踊隊として厳しい踊りのレッスンを受けてる彼女は様々な組織に入って様々な肩書きを手に入れる。

 

これがこの映画のストーリーなのだと思う。

 

何者にも属さない少女がいくつもの組織に加入することで北朝鮮の中で生きて行く地盤を知らずのうちに掲載し金正恩を頂点とする確固たるピラミッドに取り込まれて行く過程をこの映画は描くことに成功している。

 

そして、そこに組み込まれて行く過程で彼女は自分の言葉を失ったというラストシーンを迎えるのである。

 

この映画のラストシーンは、

監視の目が外れた一瞬の隙をついて映画制作サイドがシンミちゃんにある質問をするシーンだ。

「シンミ、自分の一生に何を期待する?」

 

これに対して彼女は学校で習った通り、国のために命を尽くすという旨の回答をする。

 

そして、

 

「好きな詩を教えて?」

 

という質問に彼女はぼんやりとして、「よくわからない」と答え終いには泣き出してしまう。

 しかしすぐ泣き止んで、

 

「私は偉大なる金日成元帥がつくり…」

 

と無表情で唱和を始めた。

 

 ここで彼女が体制の一員として私的な感情の一切を捨て去ったということが描かれて映画は救いようのない幕引きとなる。

 

 この映画本当にすごい。何がすごいかというと内容も今まで書いたように最初から最後まで一貫して貫いてる芯がしっかりある。

 そしてBGMがなんと言えばいいのかわからないのだが、今まで私が聞いたことのないような音楽で悲しげで二胡のような弦楽器の低い音が作中に鳴り響いてる。

 これがこの音楽の世界観に多大な貢献をして私はどっぷりこの映画の世界に浸かり切ることができた。

 

 

 まあそんなわけで、私にとって北朝鮮って本当に興味深くて勢い余って行ってみたい、とすら思う国なのである。

 

しかし、今の社会情勢からも絶対に行ってはいけないし好奇心で渡航したらそれは日本ひいては世界の大迷惑になる国だ。

 だからこそ、この映画がさせてくれる2時間と少しの北朝鮮トリップは本当に刺激的で本当におもしろかった。

 

 ぜひ時間が許す人はみて欲しいと思う一本だった。